万年筆の選び方~初心者向け~

2018.2.20

万年筆の魅力

万年筆というのは、不思議な筆記具です。割と高価で、手入れも面倒、取り扱いにもある程度の慣れやコツが必要…。わざわざそんな面倒なモノを使わずとも、世間には安価で簡単に扱えるボールペンがたくさん普及しているのですが、万年筆が市場から消えることはありません。

国内外問わず、そして老若男女問わず、万年筆は記念品や贈答品として人気のアイテムですし、自分へのご褒美として、購入する人もたくさんいます。

万年筆って、一体なにが魅力なのでしょうか?

実は、万年筆の「面倒くさいところ」、それが万年筆の魅力でもあるのです。

面倒な手入れは、続けているうちにそれが愛着を増す要素のひとつのように思えてくるし、慣れるまで時間が掛かる分、慣れるととても良く馴染み、他のペンでは味わえない書き味になります。国産メーカーのものは、見た目は地味ですが実質剛健とでも言うのか、とにかく機能面で優れていますし、舶来ものは、デザインがとにかく美しいものが多く、非常にお洒落。どちらにも共通して言えるのは、やはり高級感がある、ということでしょうか。それなりのお値段を取るだけのことはあります。

そうした要素が所有する満足へと繋がっていくんですね。こうしたことから、一度お気に入りの万年筆に出会うと、それを何年、何十年と使うという人が多いのです。たまに、良い万年筆は一生もの、という文言を目にすることがありますが、あれも、あながち嘘ではありません。

そう考えると、生涯に渡ってたくさんの安価なペンを無造作に買い続けるより、お気に入りの万年筆を一途に長年使い続けるというのは、コスパも優れていて、ある意味エコであるとも言えます。

ただ、万年筆って、ペン先の種類やインクの補充方法の違い、価格など、商品購入にあたっては、見るべき要素が結構たくさんあって、正直なにを選べば良いのか、最初はかなり戸惑います。

そんなわけで、ここでは、初心者のための万年筆の選び方についてご紹介します。

ペン先を選ぼう

万年筆のペン先には、いくつかの種類があり、何を選ぶかによってそのペンで書かれる線も変わってきます。

手帳に細かい文字を書きこむつもりで購入した万年筆が、実は太字だったり、年賀状の宛名書き用に、しっかりとした太い線を書きたいと思っていたのに、細字だったりすると、ちょっと悲しいことになってしまいます。そうならないためにも、ペン先の太さや、材質の違いによる特色を把握していきましょう。

ペン先の太さ

万年筆のペン先の太さには、主に下記のような種類があります。

  • 極細(EF)
  • 細字(F)
  • 中細(MF)
  • 中字(M)
  • 太字(BまたはL)
  • 極太(BBまたはXL)
  • ズーム(Z)
  • ミュージック(MS)

細かい文字を書き込むような場合は極細(EF)や細字(F)、大きめの文字の場合は、中字(M)以上のペン先を選ぶと良いでしょう。ただ、同じ極細(EF)や細字(F)でも、メーカーによって全然線の太さが違うこともありますので、線の太さについて強いこだわりや目的がある場合は、実物を確認するのが無難かもしれません。

また、メーカーやシリーズによっては、細字(F)か中字(M)しかないような場合も多々あります。「すごく良いデザインなんだけど、希望する太さのペン先がない」という切ない思いをすることも少なくありません(笑)

材質の違い

万年筆のペン先の材質として、主なものは下記の通りです。

  • 14金
  • 18金
  • 21金
  • 24金
  • 特殊ステンレス

金のペン先は、比較的柔らかく、ステンレスのペン先は固めなものが多いですね。昔は、金じゃないとだめ!という時期もあったそうですが、今は技術が進んで「ステンレスのペン先だから書きにくい」なんてことはないようです。

「長刀研ぎ」とは

万年筆のペン先の種類について色々調べていると、必ず目にするのが「長刀研ぎ」というワードです。「長刀研ぎ」というのは、セーラー万年筆が発売する万年筆のペン先の一種。トメ、ハネ、ハライなどが美しく書ける、日本語の筆記に特化したペン先です。「長刀研ぎ」の中にも数種類のペン先があり、用途に応じて選ぶことが出来ます。

インクの種類を選ぼう

万年筆のインクには、とにかくたくさんの種類があります。ここでは、顔料インクと染料インクの違いや、カートリッジとコンバーターの違いについてご紹介します。

顔料インクと染料インク

まず知っておきたいのは、顔料インクと染料インクの違いです。どちらのインクも紙に書いた直後の印象に大きな差はありません。滲みやすさと言う点では顔料インクが滲みにくく、染料インクが滲みやすい、発色は染料インクのほうが美しい、というくらいでしょうか。

ただ、長期保存に関しては、断然顔料インクの方が有利です。染料インクは発色が良く乾燥も速いので、便利ではありますが、耐水性や対光性という点では顔料インクと比べてかなり劣ってしまいます。

したがって、長期保存を前提とした重要書類などは、必然的に顔料インクを使うことになります。(一般的にシャチハタと呼ばれる浸透印が、重要な書類に使えないのは、染料インクを使っていて経年劣化により消えてしまうことなどがあるから、というのが理由のひとつにあります)

吸入式とカートリッジとコンバーター

万年筆のインクの補充の仕方には、吸入式とカートリッジ式とコンバーター式(吸入式とカートリッジ式両用)があります。

カートリッジはセットに手間が掛からず、予備さえ持ち歩いていれば外出先でインク切れを起こしてもすぐに対応することが出来ます。一方、吸入式や、コンバーター式を使う場合は、インクボトルからインクを吸い上げてインクを補充します。カートリッジ式よりたくさんのインクを補充できますが、カートリッジを交換するだけの作業に比べるとかなり手間が掛かりますし、外出先でインク切れを起こした時は、少々難儀です。ただ、手間は手間なんですが、カートリッジにインクを吸入する作業…、ぶっちゃけ、楽しいです(笑)

面倒のない便利さも、面倒だからこその楽しさも両方味わいたい方は、両用のコンバーター式がオススメかも?

インクの色を自由に選べる

公式な種類に使える万年筆のインク色は種類は限られていますが、手書きの筆記の目的は、ほとんどが個人的な使用を目的とした記録が多いですよね。私的な記録であれば、インクも好きなものを使えます。

パイロットのirosizukuシリーズなどは、本当にたくさんの種類のインクがあり、見ているだけで楽しくなってきますよ。 パイロット irosizukuシリーズ

お気に入りのインクを見つける、使う、というのも、万年筆を使う楽しみのうちのひとつかもしれません。

万年筆のお手入れや使用上の注意点

なにはともあれ、使いましょう

使うことが一番のケアです。インクを入れたまま使わず放置してしまうと、インクが固まってしまい、流れなくなってしまいます。(粒子の粗い顔料系のインクの場合は特に)

打ち合わせでメモを取る場合などでも、マメにキャップをする事をオススメします。数分放置すると、次に書き出そうとしたらインクが乾いて線が掠れちゃう、ということもよくありますので^^;ちなみに、いちいちキャップを閉めたり開けたりなんて面倒、という方には、ノック式の万年筆もありますよ。

直射日光の当たる場所に保管しない

乾燥して、ひび割れの原因になることがあります。

なるべく人に貸さない

弱い筆圧ですらすらと文字が書けるのが万年筆のいいところですが、それを知らずにやたら強い力で書こうとする人や、ペン先の向きを逆にして書こうとする人など、万年筆を人に貸すという行為はストレスがいっぱいです。そもそも万年筆というのは、自分の書き癖に合わせてペン先が削れて行くことで、書きやすく手に馴染むようになってくるものです。他人に貸すということは他人の癖がペンについてしまうということ。貸さないのが無難です。

コンバーターやペン先の水洗い方法

吸入式の場合は、水にペン先を浸け、水の出し入れをします。何度か水を交換しながら、インクの色が出なくなるまでそれを繰り返し、最後は良く乾燥させます。

コンバーター式の場合、コンバーターを抜いてペン先の部分を一晩水に浸けておきます。その後、吸入式と同じく水にペン先を浸け、水の出し入れをします。インクの色が出なくなるまでそれを繰り返し、最後は良く乾燥させます。

カートリッジ式の場合、ペン先の部分を一晩水に浸けておき、良く乾燥させます。

汚れた水に長時間浸けておくのは、錆びや曇りの原因になってしまう場合がありますので、汚れが酷い場合は水を取り替えてくださいね。

使ってみるまで気付かない、万年筆の意外に不便な点

使用上の注意点というほど大げさなものではありませんが、いざ万年筆デビューしてはみたものの、想定外のアクシデントに見舞われることもあります。ここでは、万年筆のデメリットについてご紹介しましょう。

裏抜け

万年筆を使い始めると、ボールペンやシャーペンを使っていた頃にはあまり経験したことのない、「裏抜け」という現象に驚くことがあります。「裏抜け」とは、万年筆のインクが、紙の裏にまで滲んでしまうこと。この現象にぶち当たった時、万年筆ユーザーは三つの選択肢の前に立つことになります。ひとつは、ノートは片面のみ使用する、と割り切る。もうひとつは、裏抜けしないノートを探す。そして最後のひとつは、愛用のノートや手帳でも裏抜けしないインクを探す。

手帳なんかの場合だと、片面だけ使うと言うのは物理的に不可能になってきますよね。ゆえに、万年筆を使う場合は、それに応じた手帳選びも必要になってきます。トラベラーズノートやカ・クリエ、無印良品の手のひらサイズポケットノートなどが、裏抜けしない、しにくいとしてネットなどでよく紹介されています。

ちなみに、モレスキンユーザーはビジネスマンに多い印象がありますが、こちらは裏抜けしちゃうことで結構有名です。(モレスキンを使っても裏抜けしないインクなどもいくつかあるみたいですが)

インク漏れ

気圧の変化の加減なのか、飛行機にてインク漏れを起こしたという人の話をネットで見たことがあります。インクがだらーっと荷物の中で広がる惨状は想像するだけで恐ろしいですね。万一にそなえて、飛行機での移動中のみ、万年筆はジップロックに入れておくのが安心かもしれません。(一回乗って大丈夫だった万年筆なら、次からはその必要もないと思いますが)

不良品?買ったばかりなのに、インクが出ないんだけど!

万年筆って、ボールペンなんかに比べると、最初は酷くインクが出にくいんです。しかし、早くインクを出そうと強く振りすぎると、インクが飛び散る危険がありますし、ペン先を強く押し付けすぎると変形の危険もあります。下ろしたての万年筆が使えるようになるまでは、少しばかり時間が必要だということを覚えておくと良いかもしれません。「よっしゃ!おニューの万年筆で会議!」と意気込んではみたものの、インクが出ずに会議冒頭部分が全然記録できませんでしたー、なんてことになると、せっかくの万年筆デビューにケチが付いてしまいますし(まあ後から振り返ればそれも楽しい思い出ですが)。

万年筆は一生ものって本当?万年筆の寿命

前述の通り、万年筆は一生ものになりうる可能性が十分にあるアイテムです。ただ、そう入ってもかたちあるものですので、寿命もあります。特に寿命があるのはペン先ですね。10数年で交換する人、同じペン先を30年以上使っている人など、使用頻度や使い方によってペン先の寿命も様々です。ただ、有名メーカーの万年筆はペン先の交換に対応してくれるところも多いので、ペン先の交換さえ可能なら、一生ものになりうるでしょう。

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