企業のための防災対策【4】- 災害対策は平時からの教育、訓練が大切

2018.2.20

災害対策には、事前の訓練と教育が不可欠です。事前に知識を持っているかどうかが、いざという時、命運を分けることもあります。たとえば、もしも地震が起こった時、今自分がいる場所に津波は来るのか?来るとしたら、その津波の高さは何メートルなのか?津波は高さ何センチまでなら歩行可能なのか?

もしも最寄りの原子力発電所で事故が起こった時、自分の自宅や職場に影響が及ぶのか?そもそも放射能とは何を指し、それが人体に被害を及ぼす数値はどの程度からなのか?ライフラインが絶たれた際、ガスや電気、水道はどういった順で復旧するのか?

災害が起こったとき、正しい知識を持っていれば、放射能汚染などの眼には見えない恐怖に、必要以上に取り乱すことはありません。避難の際にも適切な判断が下せる確率が上がります。事業継続計画(BPC)の策定や避難訓練の実施が重要なのはもちろんのこと、平時から災害に対する知識を教育しておくことも、また、企業にとっては必要な事です。

津波の危険性を知っておこう

津波のエネルギーはブルドーザー並!

津波のエネルギーは高さ2mで木造家屋を、高さ10mでコンクリートを破壊すると言われています。まるでブルドーザーで根こそぎ持っていかれるような強さのエネルギーだと考えていいでしょう。気象庁から発令された津波注意報や津波警報が、たとえ1mにも満たない高さだったとしても、油断はできません。人は高さ50cmの津波で、足を取られて歩行できなくなるといわれています。

津波のスピードは新幹線の2倍以上になることもある

津波の速さは、発生する海の深さにもよりますが、時速800kmだといわれています。これは旅客機と同じ、新幹線の2倍以上のスピードです。津波が沿岸に近付いてくるのはあっという間だということを覚えておきましょう。沿岸に上陸すればスピードは衰えますが、それでも走って逃げ切れるような速度ではありません。

自社が津波に襲われる危険がある場合は、何メートルの津波が想定されているか、防波堤や防波壁があるか、自社から避難施設までの距離や到着時間などを確認し、津波に巻き込まれないよう準備をしておく必要があります。

救命救急活動の専門家を社内で育成しておこう

平時であれば、怪我をしたら救急隊が数分で駆けつけてくれますが、大規模災害が発生したら、しばらくの間はそうした公助は期待できません。自助・共助の精神に則って、社内で救助や応急手当を行う必要があります。そのためには、予め社内に専門家を養成しておくのが有効です。災害対策本部要員に定められた社員を中心に、消防機関で実施される「普通救命講習」や「上級救命講習」を受講させましょう。

救命講習の種類

普通救命講習Ⅰ
講習時間:3時間
講習内容:心肺蘇生やAED、異物除去、止血法など
認定証等の交付:救命技能認定証
普通救命講習Ⅱ
講習時間:4時間
講習内容:普通救命講習の内容に、AEDの知識と実技の試験
認定証等の交付:救命技能認定証(自動体外式除細動器業務従事者)
上級救命講習
講習時間:8時間
講習内容:普通救命講習で学ぶ内容+骨折、外傷、やけどなどに対する応急手当や搬送法
認定証等の交付:上級救命技能認定証

※受講の費用は自治体によって異なります。
※認定証の有効期限は自治体によって異なります。
※講習の名称が自治体によって異なる場合があります。

ライフラインは電気・水道・ガスの順に復旧する

大規模災害では、電気・ガス・水道などのライフラインが停止することがあります。中核事業を再開するにあたって、ライフラインの復旧が大前提である場合、その復旧時期がいつになるかは、様々な判断をする上で重要な要素のひとつになるでしょう。下記に、過去に起こった大地震の際に、ライフラインが何日程度で復旧したのかをご紹介します。

【阪神淡路大震災】
電気:約6日
水道:約42日
ガス:約85日
【東日本大震災】
電気:約1週間
水道:約3週間
ガス:約5週間
【熊本地震】
電気:約1週間
水道:約1週間
ガス:約2週間

※復旧後でも、計画停電や鉄道の本数が減るといったこともあり、すぐには元の生活に戻れないということも多々あります。

安否確認の方法を決めておこう

災害時、自分の身の安全の確保や、必要な消火活動、救助活動が終わったら、まずしなければならないのは安否確認です。安否確認は原則として、自分が無事だということを、予め定められた連絡先に自ら連絡しなければなりません。もしも連絡がないということは、無事ではない、もしくは救助が必要な状態であるということを意味します。安否確認の目的は、主に以下のふたつです。

もし負傷したり、閉じ込め、生き埋めなどになっている従業員がいたら、
その救援・支援の必要性を確認する。
事業継続に必要な人員を迅速に把握し確保する。
安否確認の方法はいろいろとあります。人数や立場、目的に応じて使い分けましょう。

衛星携帯電話

最も確実性のある通信方法の一つです。ただし、設置コストが10万円から30万円と高額なので、社員全員に配れるツールではありません。絶対に連絡が断絶してはならない社長や専務などの主要メンバーが持つことが多いでしょう。ただし、静止衛星を使用している場合は天候や建物などにより衛星電波の受信に影響を受ける場合があります。

mca無線

衛星携帯電話と様に、確実性の高い通信方法です。衛星携帯電話に比べ、天候や建物などの影響を受けにくいことも特徴ですが、こちらもコストは高く、扱いも特殊なため、使い慣れた人しか使えないというデメリットもあります。

緊急連絡網

従来からの方法ではありますが、災害時は固定電話、携帯電話共に繋がりにくい状況が数日続くことも珍しくないため、確実性には欠けます。いずれにせよ、少人数向け。

NTT171災害伝言ダイヤル

携帯電話の災害用伝言板です。災害時は無料ですが、本来は家族間を想定した伝言サービス。社員の安否確認に利用する場合は、事前のルールづくりが重要です。また、輻輳を避けるため、通信規制がかかることもあります。

※「輻輳(ふくそう)」とは、物が1か所に集中し混雑する様

災害用ブロードバンド伝言(web171)

インターネット経由でテキストや音声、画像を登録できるサービスです。

市販の安否確認システムサービス

複数の連絡先を登録でき、繋がるまで自動的に連絡を繰り返すといった機能がついたシステムもあるので、抜け・モレがなく、情報の集約に手間も掛かりません。ただしシステムによっては「メール機能のみ」などの制限のあるものも……。市販サービスなのでカスタマイズ性は低いものの、導入は簡単で早く、コストもそれほど高くありません。ただ、平時にもランニングコストは必要になります。

公衆電話

もしも手持ちの携帯電話やネット環境が使えない事態に陥ったとき、意外に役立つのが公衆電話です。災害時も優先的に接続されますし、必要に応じて無料化されることもあります。また、停電時でも利用可能。ただし、一般回線が寸断されると不通になることもあります。設置数が現象してきているので、災害時に探す事が困難だったり、探し当てても多くの人が利用するため、かなり混雑する可能性もあります。

いずれにせよ、多くの方法が、提供側の環境に依存しているので、安否確認方法はあらかじめ二重三重に用意しておくのが確実です。