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企業のための防災対策【5】見えない危険を見える化しよう!

2018.2.20

原発事故について正しい知識を持っておこう

知識不足から起こる危険、混乱を防ぐには、知識を身につける以外に方法はありません。東日本大震災の際、福島原子力発電所で起こった事故は、国際原子力事象評価尺度(INES)で旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じ、最も深刻な「レベル7」と判定されました。

国内外で不安と緊張が高まりましたが、実のところ、放射線とはなんなのか、放射能汚染とはなんなのかをしっかり理解している人は、そう多くなかったのではないでしょうか。分からない、ということは恐ろしさを倍増させてしまうものです。

いざ原発事故が起こった時、混乱が起こらないようにするためにも、日頃から正しい知識を知っておきましょう。

放射線・放射能・放射能物質とはそれぞれ何を指す言葉なのか

放射線にも色々ある

最初に発見された放射線、X線

病院などでレントゲン撮影の際に用いられるのは、X線です。X線は1985年、ドイツのウィルヘルム・コンラッド・レントゲン博士によって発見されました。X線の発見により、レントゲン博士は1901年、第1回ノーベル賞を受賞。しかし、博士はこの発見を広く人類の役に立てたいという思いから、あえて特許は取得しませんでした。その結果、X線は医学の分野でさかんに使われるようになったのです。

アルファ線

ラジウム、プルトニウム、ウラニウム、ラドンなどの放射性原子の自然崩壊によって発生します。質量が大きく正電荷を帯びた原子核で、透過力は低く、紙一枚でも容易に止めることができます。したがって、アルファ線で被曝が起こる場合は、内部被曝のみとなります。内部被曝すると、直接細胞を傷つけ、がんなどの原因になります。アルファ線が細胞を傷つける力は、同じ量のX線やガンマ線の約20倍です。

ベータ線

トリチウム(水素の同位体)、炭素14、燐32、ストロンチウム90などの特定の放射性物質の自然崩壊によって発生。透過力はアルファ線より強いですがアルミニウム板やアクリル板で遮ることができます。体に吸収されると皮膚で止まるので皮膚の細胞傷つけ火傷のようになります。

ガンマ線

コバルト60、セシウム137などの放射性物質の自然崩壊により発生します。電磁波であるガンマ線は、X線と同様透過力があり、この性質を利用して、医療の検査や医療器具の殺菌、がん細胞を殺す放射線治療にも利用されています。鉛や分厚いコンクリートなどを通り抜けることはできません。

中性子線

ウラニウム、プルトニウムなどの核分裂により発生します。原子爆弾を爆発させるための原子核の連鎖反応を引き起こすのは、中性子です。プラスの電気もマイナスの電気を帯びていないため物質を作る原子の電子と引き合いません。そのため遠くまで飛ぶことができ鉄や鉛の板も通過することができます。

それぞれの放射線の利用方法

一言に放射線と言っても、たくさんの種類があり、人体に有害なものもあれば利用方法次第では病気を治したり医療に役立っているものもあります。例えばじゃがいも。じゃがいもの芽にはソラニンやチャコニンといった毒性物質が含まれているため、発芽すると食べられなくなりますが、じゃがいもにガンマ線を当てることで、発芽しないようにすることが出来ます。日本国内で放射線を照射されたじゃがいもは限定的にしか流通していませんが、世界的には牛肉や豚肉、香辛料、果実など、様々な種類の食品で放射線による殺菌・殺虫などが行われています。また、黒斑病に罹りやすい二十世紀梨に、ガンマ線を照射して品種改良し、病気に罹りにくくした品種としては、二十世紀ゴールドが挙げられます。

工業分野では、タイヤや電線、ゴム、プラスチックなどの材料にガンマ線を照射することで強度を増したり、薬品に強い性質に改良することができます。また、物質を透過するX線、ガンマ線を使うと、機械などの内部を壊さずに検査することができ、このように部品を分解しないで検査することを、非破壊検査と言います。

歴史研究の分野では、放射性物質の半減期を利用した遺跡の年代測定などが行われています。

医療被曝について

検査や治療などの放射線診療は、患者にとって病気の早期発見や治療の面で利益となります。しかしその一方で、放射線による被曝を受けることになります。放射線を扱う医師や検査技師には、年間の被曝線量の限度量が定められていますが、放射線診療を受ける患者側に、規制値はありません。放射線診療によって受ける利益と、診療で受ける放射線の被曝という不利益が目に見える形で管理される必要はあるかもしれません。ちなみに、健康診断などで毎年受ける胃部X線検査では、15~25mSv、CTでは10~20mSvの被曝線量があると言われています。

放射能と放射性物質、被曝、汚染。それぞれの違いは何?

放射線にはいろいろな種類があり、それが人体や食物、物体に及ぼす作用も様々であることはわかりました。では、放射能とは一体何を指す言葉なのでしょうか?放射性物質とは、被曝とは、放射能汚染とは?

放射能、放射能物質とは

放射能とは、放射線を出す力のこと。そして放射性物質とは、ウランやプルトニウムなどの、放射線を出す力を持つ物質のことを指します。放射線、放射能、放射性物質、それぞれの関係について、北陸電力のHPに、とても分かりやすい例があるので、以下に転載します。

蛍に例えると、放射線は蛍の光、放射性物質は蛍、放射能は光を出す能力です。蛍の光が虫かごから漏れると「放射線漏れ」、蛍が逃げると「放射能物質の漏れ」に例えられます。

参考:参考北陸電力ホームページ

被曝、放射能汚染とは

被曝とは、人体が放射線にさらされることを言います。被曝には内部被曝と外部被曝があり、内部被曝とは放射性物質が体の中に入って体の内側から放射線を浴びること、外部被曝は体の外から放射線を浴びることで、単位はSv(シーベルト)で表します。

一方、汚染はまだ被曝していない状態で、放射性物質が衣服などに付着した状態を指します。放っておくと被曝を引き起こす可能性があるので、きちんと除染する必要があります。汚染の単位はBq(ベクレル)で表します。

放射線関係のシーベルトやベクレル、グレイとは、何を表す単位なのか?

放射線の強さを表す単位には、シーベルト(Sv)、グレイ(Gy)、放射能の強さを表す単位には、ベクレル(Bq)が使われます。

放射能の強さベクレル(Bq)

ベクレル(Bq)は、放射性物質が放射線を出す力の大きさ(放射能)を指す単位です。 1Bqは、1秒間に起こる放射性物質の崩壊数のこと。また、放射性物質1Lや1kgなど、量に応じて表すことが多いため、Bq/LやBq/kgといった表記が多くなります。

人体への影響の強さシーベルト(Sv)

放射線による人体への影響は、受けた場所や放射線の種類によって異なります。そこで、ひとつの単位で影響を表せるようにした単位がシーベルト(Sv)です。

グレイ(Gy)

グレイ(Gy)は体の1kgあたりに吸収されたエネルギーの量を示す単位です。エネルギーを吸収するという事は、体の中の臓器や組織が放射線によって傷ついたことを意味します。吸収したエネルギーが大きいほど体が受ける傷も大きくなります。